技術支援
膜タンパク質研究を加速するための独自基盤技術開発
Key1:独自の理論計算法による耐熱化変異体予測技術
独自の理論計算法により、膜タンパク質のエントロピー変化を解析し、耐熱化の可能性を短時間で評価できます。積分方程式論と形態計測学的手法を組み合わせ、計算負荷を従来の1万分の1に軽減。全アミノ酸置換体を解析し、上位20候補で約50%の的中率を実現しました。この技術は、膜タンパク質の安定性向上に新たな可能性を提供します。
Key2:抗体を用いたオンカラム精製技術
理論予測に基づき耐熱化に成功した膜タンパク質を、高効率で精製する新しい手法です。独自開発のHisタグ抗体(iHis8)を使用し、HEK細胞で発現した膜タンパク質を迅速かつ高純度で回収可能。オンカラムでの3Cプロテアーゼ処理により溶出します。ナノディスク化にも対応し、結晶化やクライオ電顕解析、化合物探索など幅広い用途に応用できます。
Key3:結合化合物スクリーニング技術
阻害活性評価、安定性評価、熱測定による結合親和性測定、結合の速度論的な解析など多角的な解析で化合物のスクリーニングを行うことが可能です。Biacoreにおいては従来のAvidin-SAチップ法に代わり、ナノディスク認識抗体を活用した新規固定化法を開発しました。この技術により膜タンパク質の安定性を維持しながら、結合活性を評価できます。このような技術により、化合物スクリーニングの精度向上と膜タンパク質を標的とした創薬の効率化に貢献します。
Key4:機能性抗体の作製技術
膜タンパク質をプロテオリポソームとしてマウスに免疫し、高感度な抗体を作製します。1次スクリーニングではリポソームELISAを用いて特異的結合を確認、2次スクリーニングでは変性ドットブロットで構造認識型抗体を選別。さらに、3次スクリーニングで結合親和性を解析し、高親和性抗体を精選します。このプロセスにより、膜タンパク質研究や創薬に貢献する高性能抗体の効率的な作製が可能です。
Key5:膜タンパク質立体構造解析技術
本技術は、膜タンパク質の精製(Key 1, 2)、結合化合物スクリーニング(Key 3)、機能性抗体作製(Key 4)を統合し、X線結晶構造解析やクライオ電顕解析を用いて、創薬関連タンパク質の詳細な立体構造を明らかにします。この技術により、多くの経口薬剤や抗体医薬のタネが得られます。「タネから薬」を目指し、さらなる技術革新を追求します。
Key6:薬剤設計技術の開発
薬剤のタネ(Key 3)と膜タンパク質の結合自由エネルギーを予測する独自の統計熱力学理論(Key 1)を活用し、計算負荷を1万分の1に削減した薬剤設計システム(Key 6)を構築しました。設計した化合物の有機合成や化合物評価を行い、効率的に薬剤候補を創出していきます。この技術は、薬学研究者との連携を通じて、次世代医薬品の共同開発を加速します。
Key7:組換え抗体医薬設計技術の開発
マウス由来の抗体医薬のタネを組換え技術でヒト型に改変し、耐熱化理論計算法(Key 1)を用いて抗体分子を最適化。これにより、ヒト型抗体の安定性が向上し、抗体医薬開発におけるボトルネックを解消します。耐熱化した高性能なヒト型抗体を創出することで、新たな医薬品の可能性を広げます。この技術開発は、QST量子生命科学研究所との連携により推進します。
Key8:細胞薬効評価技術の開発
膜チャネルの活性に伴うイオン移動を瞬時解析可能な電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)センサを工学部の武居教授らと開発しました。また、抗体医薬品設計技術とQSTのナノダイヤモンドを用いた超高感度バイオセンシング技術を統合し、次世代医薬品の評価と設計を大幅に加速します。
Key9:動物薬効評価技術の開発
抗体医薬候補(Key 7)にナノダイヤを融合し、マウス内での抗体の挙動を非侵襲的かつ超高感度にイメージングする革新的な動物薬効評価技術(Key 9)を共同開発します。医学研究院ではJ-PEAKSの支援のもと、代替法の開発や臨床試験治験体制を整備し、真菌医学研究センターではマウスを用いた腸内フローラ研究体制を構築しています。これらの技術を統合することで、動物モデルを用いた創薬研究を次のレベルへ引き上げます。
重要な研究トピック
Topic1:薬剤耐性菌V-ATPaseを標的とした新規抗菌薬の開発
V-ATPaseの新たな阻害剤結合部位を特定しました。新規抗生剤の候補となる化合物構造をもとに合成展開し、HTS(ハイスループットスクリーニング)により薬剤耐性菌の新規抗生剤の開発を行っています。これまでに阻害剤の投与によって病原菌の菌体数を97%減少させることに成功しました。構造に基づいた化合物展開は、耐性菌問題への画期的な解決策を提供します。
Topic2:ウィルスの感染標的膜タンパク質に対する中和抗体薬の開発
新型コロナウイルス(ACE2)やパピローマウイルス(V-ATPase)など、ウイルスの感染標的となる膜タンパク質を耐熱化・大量生産し、機能性抗体作製技術を活用して高性能な中和抗体薬を開発します。これにより、ウイルス感染症の治療と予防に新たな選択肢を提供します。
Topic3:耐熱化ロドプシンを利用した新規光電池・バイオセンサーの開発
光駆動性H⁺ポンプとしての機能を持つロドプシンを耐熱化し、世界で最も安定なロドプシン(Tm: 105°C)の創出に成功しました。この耐熱化ロドプシンを集積化・フィルム化し、光電池や革新的なバイオセンサーの開発を行います。耐久性と性能を両立させ、多様な分野への応用が期待されます。
